NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.335


専門分野: 骨・軟骨

Q: 骨髄幹細胞移植手術について

 私は現在54歳の男性ですが、遠い昔(13歳の中学1年のとき)にある不幸な出来事を体験して死ぬ思いをしたことがありました。そのときは九死に一生を得ることが出来たのですが、その直後から「3つ」の体調異変を引き起こしてしまい、その後も改善されないままに現在に至っていることがあります。
「3つ」体調異変の1つは慢性的に続いている下痢です。下痢は腹痛を伴うものではありませんが食後5分〜10分ほどで便意を催して1日に5回〜6回トイレに行く日が毎日のように続いております。下痢が酷いときは水の状態で水分を補給するために飲んだ水までも、そのまま下痢になって出てしまうほどです。そのような日はトイレに行く回数が10回近くにもなります。
勿論、今までに専門の病院や医院で診て貰ったことは何度もありますが腸にバリュームを流し込んで検査をしても異常は見つからないために処方される薬を飲み続けても(下痢を一時的に止めることができるだけで)全く効果がないのです。
そのとき、同時に引き起こした2つ目の体調異変は(やはり13歳のときに)風呂に入ってシャンプーをするたびに頭髪と陰毛が両手の指にびっしりと絡みつくほど大量に抜けてしまったのです。それ以来、そのときほど大量ではありませんが頭髪と陰毛が抜けやすい状態は慢性的に続いて現在に至っております。
体調異変の3つ目は、そのとき以来、私の身長の伸びは完全に止まってしまい、そのために現在の私の身長は13歳当時のままで161センチしかありません。
そのとき私が体験した不幸な出来事は、体のバランスを保つために重要な働きをするホルモンのバランスを失ってしまったのが原因ではないかと思うのですが、先日、NHKテレビで「再生医療」を取り上げた番組で「骨髄幹細胞」を用いた治療の効果が紹介されていたのを見たときに私が直感的に思ったのは、今まで、どれほど医者に診てもらっても一向に改善されることがなかった症状(酷い下痢)は私にとっては先天性のものではないために、私自身の骨髄の中にある幹細胞が遺伝子レベルにおいて正常なものであるならば、それを培養して自分の体内へ輸血(移植)することで「骨髄幹細胞が私の腸が正常に働かなくなったところへ直接働きかけて正常化を促す効果が期待できるではないだろうか?」ということでした。
NHKのテレビ番組では、骨髄幹細胞の移植による治療法は現時点では安全性の確認が済んでいないために「臨床試験の段階である」旨の説明がなされておりましたが、その点のリスクについては患者本人が了解し「同意」したならば、臨床試験に参加させていただくことができて、ご説明のように私自身をドナーとする「骨髄幹細胞の移植手術」を受けることは可能でしょうか?
たとえ、手術の結果が期待したほどの効果が得られなかったとしても、長く苦しんできた私にとっては、このまま座して何もしないで待つよりも、遥かに意味があることで満足することができますので何らかのハードルを越えることで実現が可能ならば、是非とも、臨床試験に参加させて頂いて、ご説明の手術を受けたいと思うのですが、その点につきまして、専門家の先生方のご意見をお聞かせ頂けましたら大変有り難く存じます。

掲載日: 2008.4.16

A:

 原因不明の下痢などの症状に悩まされておられるご様子、さぞお困りのこととお見舞い申し上げます。個々の症状への対応は、実際に診療を受けておられる医師と十分ご相談頂く他はないと思いますが、「腸疾患に対する骨髄幹細胞による臨床試験への参加」につき一般的な事項を説明させていただき回答とさせていただきます。
自己骨髄由来の幹細胞を移植することが炎症性腸疾患の一種であるクローン病に有効であったという米国での臨床試験の報告があり(専門的になりますが英語の論文がGastroenterology.2005 Mar、128(3):552-63に掲載されています)、海外では類似の治療法の治験が進行中で今後の展開が期待されます。しかし、我が国では新しい薬剤の治験が中心で、幹細胞による治験が行われているとの情報は得ておりません。
一般的に、新しい治療法の臨床試験を行う場合、疾患モデル動物を対象とした前臨床試験で安全性と有効性を確認した上で、対象となる患者さんの条件(疾患やその重症度、他の全身状態、年齢、過去の治療歴など)を決め、詳細な実施計画がその施設の倫理委員会などの第三者機関で承認される必要があります。従って、「検査をしても異常は見つからない」状況で対象となる疾患に該当しない場合、参加していただくことはできないことになります。
これも一般的なお話ですが、下痢などの症状があるにもかかわらず画像診断などの検査で以上は見つからない場合、機能的な(腸の運動など、臓器の働きを調節するレベルでの)異常が原因となっていることがあります。信頼できる医師とよく相談され、ご自身に最適な治療法を見つけることで、症状が軽快することを願っております。
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