NPO法人再生医療推進センター

第15回 元気の出る再生医療

脂肪幹細胞によるアルツハイマー病の治療


脂肪幹細胞の再生医療でアルツハイマー病が治る!!

そんな夢が脂肪幹細胞の点滴投与で叶うかもしれません。

アルツハイマー病は認知症の代表的疾患です。アセチルコリンが減少するためそれを補充する治療が行われていますが原因を直しているのではないため、病気自体は進行していきます。

アルツハイマー病には3つの特徴があります。

  • 第一は老人斑の沈着
    これはアミロイドという異常蛋白であることが分かっています。
  • 第二は現線維変化
    これはリン酸化されたタウです。
  • 第三は神経細胞の減少
    脳の神経細胞が減少するので認知機能が障害され認知症を発症します。つまり、神経細胞を守ることができれば認知症にならずにすみますし、神経細胞を修復することができれば認知症は治ります。

この神経細胞減少の原因はまだわかっていません。しかし代表的な二つの変化;アミロイドとタウは犯人の最有力候補です。現在この二つを除去することによってアルツハイマー病を治療しようとする研究が世界中で進んでいます。その一つがBAN2401(エーザイ)というアミロイド抗体です。第2相治験でアミロイドを除去し認知症の進行を抑制に成功しました。タウに対する抗体治療も進んでいます。タウは神経細胞内に沈着するため、神経外に沈着するアミロイドに比べてその除去が難しいと言われています。そこでタウが神経細胞から別の神経細胞に移る時、具体的にはシナプスのタウを抗体で処理しようというのが現在の戦略です。

残念ながらタウとアミロイドの両方に作用する薬はありません。現在研究されている薬は抗体が主流で特定の蛋白の特定の部位にしか働かないからです。

近年その両方に作用する“薬”が発見されました。その“薬”というのは、なんと薬品ではなくて「幹細胞」です。幹細胞とはこれから何かの細胞に分化することができる細胞のことで、iPS細胞、ES細胞、そして間葉系幹細胞がその代表です。

iPSは何にでも分化する万能細胞です。ES細胞も同様に万能細胞ですが、胚から採取するという倫理的問題が残ります。もう一つ分化能をもつ細胞があり、何と私たち全員が生まれながらに持っています。それが間葉系幹細胞です。最初に骨髄中に発見されました。そして2001年、皮下脂肪の中に多数の幹細胞が存在することが分かったのです。脂肪組織の中にあるので脂肪幹細胞と呼びますが、脂肪細胞ではありません。
脂肪幹細胞の分化能は例えばiPSに比べてずっと弱いものです。しかし、何ら遺伝子操作を加えてはいませんので、遺伝子はその個人のものと全く同じです。ですから、そのままその人に「投与」することができます。iPSは万能細胞ですのでそのまま投与すれば、身体の中で何に分化するか分かりません。ですから、目的とする“細胞”に分化させてから投与します。つまり移植します。将来的には様々な組織や臓器が作られて移植できるようになるでしょう。

一方、脂肪幹細胞は、そのまま、つまり未分化のまま投与できます。投与方法は普通の点滴です。点滴で投与された脂肪幹細胞は、身体の中で特に傷んだ所に集まります。これをホーミングと呼びますが、こんな都合の良いことはありません。傷んだ所を治してくれるからです。脳の中にも入っていくことが確認されています。そこで、異常なタンパクを除去したり、脳神経の修復をしてくれます。例えばアミロイドを除去することは確認されていますし、その時に働く酵素も発見されました。神経栄養因子を出したり、炎症を抑えたり、血流を改善することも確認されています。幹細胞が神経細胞に分化することもできます。何といっても元々が自分自身の細胞ですので安全です。アルツハイマー病ではアミロイドやタウですが、パーキンソン病ではαシヌクレインが異常に貯まるタンパクです(進行性核上性麻痺やALSの一部でもタウが貯まります)。様々な神経難病でこの様な異常タンパクが貯まっていることが分かってきました。

癌が免疫療法で治るようになったように、神経難病も脂肪幹細胞による再生医療で治る道扉が今将に開かれようとしています。

(neuron、2018年10月31日)


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