NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.299


専門分野: 幹細胞など基礎

Q: 幹細胞についての基本的質問

 再生医療の材料である胎児由来細胞は、体性幹細胞の未熟な(若い)ものという理解の仕方は、間違っているのでしょうか。

掲載日: 2007.3.12

A:

 一般論的なご質問ですので、用語の意味を確認しながら説明しますが、回答としては「間違っていないとは言い切れない」と思います。
「胎児由来細胞」とは人工的に妊娠を中絶された胎児の組織から得られる細胞のことで、既に体の一部を形成する程度には分化していますから、受精卵やES細胞(胚性幹細胞)のように全ての細胞に分化できる幹細胞ではなくなっており、その意味では、体性の細胞であると考えられます。「未熟な(若い)もの」という意味を少し考えてみますと、母体外で生命を維持できない時期の胎児では、各臓器の細胞が十分に分化して機能している訳ではないので「未熟」であると言えますし、受精卵として生まれてから短期間しか経過していない(従って、分裂回数も少ない)ので「若い」と言えると思います。さらに言えば、このような細胞は本来であれば大人の体を形成できるまで分裂・増殖が可能な訳ですから、成人の体細胞に比べるとより長い余命(より多く分裂できる可能性)が期待できると言えるかもしれません。但し、「胎児由来細胞」が全て「幹細胞」である理由はなく、取り出した組織の中に「幹細胞」(細胞分裂で形成される2個の娘細胞のうち、一方は別の種類の細胞に分化するが、もう一方は分裂前の細胞と同じ分化能を維持するような細胞)の存在が期待されるということだと思います。さらに、テロメラーゼを発現する幹細胞は言わば不死化細胞であり、また、幹細胞自体はそもそも「未熟」な細胞ですから、成体の組織中に存在すると考えられる幹細胞と胎児由来の幹細胞との間で、「若さ」や「未熟さ」を比較すること自体に意味があるかどうか疑問です。胎児由来幹細胞の方が、分裂回数が少ないという意味では、成体の幹細胞より「若い」と言えるかもしれませんが・・・・。
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