NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.59


専門分野: 歯周

Q: 歯、顎の再生について

 36歳の弟が右下顎の良性腫瘍のため手術をしなければならなくなりました。手術前に右下顎の歯全てを抜歯し、その後右下顎は摘出、腰部のちょう骨を移植するというものです。術後は顔面の左右のバランスが崩れゆがみがでてしまうこと。咀嚼、言語において不自由がでるといわれております。また、術後顎の骨の土台がなくなってしまうため、人口義歯・インプラントも不可能であり、また入れ歯もできなく、歯がなくなってしまうということです。歯の機能的な部分はやむを得ないとしても、歯の有無によって顔の見た目は想像以上に違います。そこで最低限見た目(審美的なもの)だけでも、何とかならないものかと思い、ネット検索した結果このページを見つけました。最近再生医療の話がマスコミでもよく取り上げられています。歯の再生、顎の骨の再生などの現状はどうなっているのでしょうか。また、現在実際にそういった研究を行っている医療機関や弟のようなケースの患者の受入・手術・治療等を行っている病院等をご教授いただければ幸いです。なお、現在治療を受けている病院においては、良性腫瘍なので、仕事の都合のよい時期といわれており、10月に手術予定としておりますので、手術はやむを得ないと思っていますが、できるだけ早い時期に他の医療機関の情報を得てよりよい方法で手術を受けさせたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

掲載日: 2006.8.30

A:

 お尋ねの件について分かる範囲でお答えします。
1. 腫瘍切除後の形態変化(顔形の変化)と咀嚼、言語の障害の程度とそれらの修復の方法は良性の腫瘍の種類(腫瘍の臨床態度)、病変の範囲と切除法によってかなり異なって参ります。
2.したがって、具体的なことは差し控えたいと思いますが。修復の方法としては
2.1 金属などの人工骨
2.2 自家骨移植(腰の骨など)
2.3 顎骨の再生医療が行われます。
2.1は簡便な方法ですが、顔の形を整えるだけで義歯を入れることはできませんし、破切や固定ネジの緩みなどがあり、永久的ではありません。
2.2の方法は古くから行われている方法で、顎の欠損部に見合う骨を他から採取して移植するわけですが、形を整えることに限界があります。
2.3は骨髄(腸骨の骨髄)と顎の形に合わせた足場を使って、顎を再生する方法で理にかなった方法と考えております。この場合、どのような足場を使うかは大変重要です。チタン製のものが市販されておりますが、金属は一生、体内に残りますし、細かい調整ができず、元通りの複雑な顎の形に骨を作ることは必ずしも容易ではありません。
私達は金属と違って顎ができた後は、体の中で次第に吸収してなくなってしまう、足場を開発(ポリ乳酸製、とうもろこしが原料)し、臨床試験を行い良好な成績を得ております。
しかし、症例数が到達目標に達していないこと、メーカーの事情もあり、認可を得ておりません。現在、吸収期間(これまでのものは約5年かかります)を短縮することや、応用範囲を拡大する(経済性を考慮して)などバージョンアップのための新製品を開発中です。
これまでのポリ乳酸製の足場は在庫がほとんどなくなり(埼玉がんセンターの口腔外科で若干)、患者さんに充分対応できないでいるのが現状です。
3. 今度のような症例については関東では私のところと他の2施設が治療グループとなっております。うち1施設の口腔外科は口腔腫瘍(良性も含め)の日本のメッカ的存在であります。私も顎の再生手術で協力させてもらっております。
先ず、土台となる顎を作るのが先決で、しっかりした顎ができれば義歯やインプラントが可能となります。歯の再生については、もっと先のことになります。
現在お答えできるのは以上ですが、何かありますれば、ご遠慮なく、お聞き下さい。
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