NPO法人再生医療推進センター

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梅雨空
梅雨(つゆ・ばいう)空の京都は靄っています。因みに中国でつゆは同じ漢字「梅雨」でメイウー(不正確ですが)と発音するようです。

前回も触れましたが、新薬を開発して臨床現場に届けるには長い期間(9年から17年と言われている)と大きな開発費(2000〜3000億円と言われている)を要します。これは,有効性と安全性を担保して患者さんが必要とする治療手段を臨床現場に届けるためです。また,この背景は対象疾患数が少ないなど開発費用を回収できない治療手段の開発は優先されない事も意味しています。私たちは有効性と安全性を担保するためには必要な事とそのジレンマを許容してきました。これはiPS細胞や間葉系幹細胞による再生医療の実用化にも当てはまります。再生医療はどうしても当初は大学や研究機関の主導の下に実用化が進められると予想され、新薬メーカー主導の低分子医薬品の開発の様に膨大なヒト・モノ・カネを長期間動員して開発スピードを上げることは困難です。そこで厚労省は,iPS細胞等による再生医療は



として,再生医療を対象に2014年の医薬品・医療機器等法(薬機法)改正により、期限付き・条件付きで早期に承認する制度が創設されました。その概要は公開された条件付早期承認制度の資料を参考にしてください。この条件付早期承認制度は,①医薬品開発過程にある臨床第3相(P3)試験が省かれている、②発売後に有効性と安全性を確認する、③重篤な疾患に対する有用な医薬品の開発を対象とすることに特徴があります。これは。検証的臨床試験(臨床第3相(P3)試験)以外の臨床試験(P2試験など探索的臨床試験や非臨床試験など)で一定の有効性・安全性が確認された場合、発売後にデータを収集し、検証することを条件に承認する事を意味しています1)。この条件付早期承認制度は内外に大きな賛否両論を湧き起こしました。natureからのこの制度に対する論評とに関しては再生医療トピックスNo.26「再びNature誌からの投げかけ」を参考にしてください。

この条件付早期承認制度は、その後2017年に医薬品と医療機器でも運用が始まっています。世界的に前例のない新しい制度を導入した厚労省が前提とした「国民的期待が高い」、「安全性と有効性を確保」、「迅速な実用化」は、患者さんと医療機関がリスクを負い、健康保険医療制度を通じて国民全員が支えることも意味しています。この制度が難病に苦しむ患者さんや難病に対峙する医療従事者、そしてそれを支える国民、また制度導入に尽力された関係者の方々により良い結果をもたらすためには利害や得失を超越し、倫理的・科学的に正しい制度運用が求められます。本制度が難病に立向かう患者さんの真の希望となる制度になることを切に期待します。私たちは再生医療を促進して難病に苦しむ患者さんに寄り添う立場から本制度を見守っていきたいと思っています。


(参考資料)

  1. AnswersNews ニュース解説:厚労省が運用を開始した医薬品の「条件付き早期承認制度」3つのポイント、2017年10月27日